第2章 少年の夢

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「なぜですか? まだ何も診て頂いてないですか? もっとちゃんと診てください。せっかく来たのに……」 「そう、せっかく来てもらったのに申し訳ない。ただ、僕は体の医者であると同時に、心の医者である。僕は聡太くんに『心の目』を開いてほしいと思っているんだ」 「僕……心の目って、そんな……」聡太はうつむいた。  母、真弓は抗議の意志を見せ、口が痛かったのも忘れて声を荒げた。 「先生! 息子に気休めをいうのは、やめてください!! いい加減なことを言って、かえってこの子を傷つけないで下さい! 『心の目』で何が見えるって言うのですか?」 「本質です」 「本質?」 「そう、『あらゆる物の本質』『ほんとうの姿』が見えるのです。それが『心の目の持つ力』です」 二人は聞いた事のない話に、戸惑っていたが、山野栄医師は構わず説明を続けた。 「心の目は、霊眼(れいがん)とか天眼(てんげん)と言われているものです。仏教でも、お釈迦様の弟子で阿那律(あなりつ)という人がいました。その人は十大弟子の一人で天眼第一(てんげんだいいち)という称号をもらいました。失明したあとに霊眼が開いた人として有名です」 「……実は、この世界には様々な真実が、神秘のベールに隠されているのです。外見上は美しく見えても、鬼のような心の持ち主もいます。また逆に、一見目立たないような人の中に偉人がいることもあります。例えばこうした真実を、瞬時に見抜くことが出来ます」 「ボクは……」聡太くんが、顔をあげた。 「この目が見えなきゃ困るんだ。そんな特別な目は要らない。みんなと同じでいい。この普通の目を見えるようにしたいです。ボクは……ボクは……あきらめたくないんだ……」
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