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聡太くんの夢
「おばさん、だれ?」
聡太が、けげんな顔をする。
「おばさんじゃないわよ! 目上の人に向かっておばさんはないでしょ!」
「目上だからおばさんじゃん」
「違うわよ!」
「じゃあ、何だよ」
「私は……」
スタッフルームはしんと静まり返る。
「私は…………私は、あなたのサリバン先生なのよ!!」
山野栄はびっくりして目をパチクリさせた。溝口も同様だ。いったい藤川さんは、何を言い出すのか?
「ぷっ、ボク、意味わかんないですけど。サリバンて何?」
聡太は、小馬鹿にした口調で言う。
「えーーサリバン先生を知らない? じゃあ、サウンドオブミュージックのマリアでいいわ。あなたのマリアになるわ」
「なんだそれ?」
「えーー、じゃあ、ハイジは解る? アルプスの少女ハイジ」
「ああ、なんかテレビのアニメで見たことある」
「そう!それそれ。そのロッテンマイヤー先生になってあげる!」
「あの眼鏡のおばさん? ボクどうせならクララのほうがいいなあ。金髪で可愛いし」
「ふざけないでよ!!」紫織も興奮状態だ。
「うっ……こんな話、真面目に聞いてられるかよ。意味わかんないし」
「とにかく!! 山野栄先生の言う事は本当なの! 人生には目的があるのよ! 私は昨日、自殺をしようとした人が立ち直るのを見たの!」
「うるさいなーー。もういいよ。その人のことは知らないけど、ボクにとっては、今日一日が無駄だってことだけなんだ!」
バンッと大きな音が響いた。紫織が机を叩いたのだ。
「君ね、本当にこれでいいの!? 何よ! 目が見えないくらいで! さんざん病院回ったんでしょ? 無駄かどうか、ちゃんと最後まで確かめてみたらどうなのよ!」
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