胸のつかえ。

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胸のつかえ。

俺の腰に回された楠木の手に 自分の手をそっと重ねた。 「楠木、お前ホント優しいな。 俺の両親より……やさ…… 「河野。ゴメン。ツラいよな…… 寂しいよな。」 楠木は俺の首筋に顔を埋めた。 親の離婚が決まってから どうすれば1人で生きていけるのか 考えるのに必死だった。 楠木に『寂しくないか』と言われ 初めて俺は寂しかったと知った。 そう思ったら 胸のつかえがストンと無くなった。 楠木は俺を抱えたままソファに座り 長いしなやかなキレイな指で 俺の頭を撫でてくれた。 俺は半身振り返り 楠木のワイシャツに顔を埋め 声を殺して泣いた。 やっと 泣けた。
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