お泊り。

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お泊り。

どれだけ時間が経ったのだろう。 俺は安心しきって 楠木に寄りかかり甘えていた。 ジージーと楠木のスマホが震えた。 「ゴメン。」 電話らしい。 楠木は俺を抱えたまま電話に出た。 「……僕。 今、友達のトコ。 ん? 編入生だよ? これから行くよ。 支度出来たら電話するよ。 ん。 後でね。」 「楠木、ありがと。 俺、嬉しかったわ。」 「また、来るから……ゴメンね。」 「大丈夫。忙しいのに悪かったな。 勉強よろしくな。」 「河野……」 楠木はもう一度俺を抱きしめて…… 俺の首筋に温かいモノを押し付けた。 「じゃっ……」 河野の家から自宅へ急いだ。 何だか分からない 感情が渦を巻く。 今日初めて会って話した 河野が 気になる。 寂しい自分と 重なって見えるのかもしれない。 シャワーを浴び コンタクトをつける。 髪をハーフアップに纏める。 ジーンズのショートパンツを履き 黒いキャミソールを着て、 赤いチェックのロングネルシャツを羽織る。 泊まれるようにバックに荷物を詰めた。 玄関のチャイムが鳴ると同時にドアが開く。 支度出来たら電話するって言ったのに……。 玄関から声がする。 「今行く。」 階段を降り、 玄関で黒の編み上げのロングブーツを履いた。 「今日、いいか?」 隣りから声がかかる。 僕はいつもの自分になりたくて 頷いた。 さっきまでいた河野のアパートがある駅で 電車を降りて いつもの ラブホに 向かった。
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