楠木。

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楠木。

俺の前の席に座る 『楠木』 先生に編入生の面倒を押し付けられて イヤと言えないお人好し。 クセのある茶色い髪。 ふわふわで小型犬みたいだけど 全体に髪が長くモッサリしてる。 黒いフレームの眼鏡。 漫画みたいにグルグルしてる瓶底眼鏡。 瞳が隠れていて『楠木』の顔がわからない。 制服に身を包んでいるのに 華奢な身体なのはよく分かる。 長い髪の間から見える首筋に ドキドキしてしまった。 休み時間は基本、文庫本を広げている。 真面目そうなクラスメイトと二、三口をきくコトはあるけれど騒ぐ事はない。 両親に捨てられ 自分にでさえ興味がない。 今、俺のココロを占めるのは ステージの上の歌姫。 でも 目の前の 小型犬に興味を持つ自分に 気づいてしまった。
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