一人暮らし。

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一人暮らし。

玄関からの短い廊下の突き当たり。 リビングへの扉を開ける。 明らかに一人暮らしを思わせる部屋だ。 楠木は部屋を見回して 「河野、一人暮らしなの?」 「あぁ。」 「寂しくないの?」 「えっ?」 「15歳で 一人暮らしなんて寂しくないの?」 楠木の口ぶりは俺が寂しがって当たり前だと 言っているように感じた。 「仕方ないんだ。」 やっぱり 寂しいのかもしれない。 歪んでいるだろう表情を 楠木に見られたくなくて 背を向けた。 「俺の親、離婚して…… 2人とも俺を引き取らないって……」 「……ゴメン。河野。」 背中に温かいモノを感じた。 楠木が抱きついてきたようだ。 「ゴメン。 ツラい事言わせて。」 楠木が俺にぎゅっとしがみついてきた。 俺は男に抱きつく楠木に驚いたが それより 本当に 楠木は お人好しで 優しい いいヤツだと思った。 「楠木、ありがとうな。」
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