ニンキモノ。

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ニンキモノ。

「お前ら、席に着け~ 『染野 匠』 覚えろ~俺の名前だ。」 ドッと笑いが起きる。 「先生は俺らの担任?」 「先生、何歳?」 「先生、結婚は?」 「子供いくつ?」 あちこちでフザケタ質問が飛ぶ。 それ知りたいの? 「たっくん、入学式でなくていいの?」 イクが言った。 「『たっくん』はイヤだ。」 また笑いが起きる。 先生、そこじゃないだろと 心の中で突っ込む。 「ほら、体育館に行くよ? たっくん?」 またイクがそんなコトを言いながら席を立った。 ガタガタと音を立てて席を立つヤツら。 イクの仲間だ。 「入学式遅刻とかさすがにイヤだからな。」 クラス全体が体育館に移動を始める。 「案内の先輩の、いう事きけよ~」 あくまでも担任の染野はマイペースだった。 最後に教室を出る。 イクとイクの仲間が廊下にいた。 「コウ?」 イクが右手をオレに差し出してきた。 「行くよ?」 オレに向けられるキレイな顔。 息が止まるかと思った。 「ほら」 オレの左手をとり抱きかかえてから 肩を組んできた。 また 息が止まるかと思った。 「楠木~ほらお前も 早く行こうぜ?」 「おぅ」 イクはオレと肩を組んだまま廊下を歩いた。 クラスのヤツも 他のクラスのヤツも 男女問わず イクに声をかける。 イクは ニンキモノだ。 イクに肩を組まれ ふわふわとした気持ちのまま 入学式に向かった。
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