染野君。

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染野君。

入学式が終わり、教室でホームルーム。 高校とはいえ 入学式には保護者が来る。 もはや定着してしまった 『たっくん』が挨拶をする。 「保護者の皆さま 本日は入学、おめでとうございます。 皆さまにお願いがあります。 毎朝、お子さんにゴハンを食べさせて 送り出してください。 そうすればきっと実りある一日が送れます。 よろしくお願いします。」 当たり前の事なのに……とココロの中で 毒づいた。 ホームルームが終わり 保護者も生徒も帰宅となる。 「染野君、久しぶりね。」 「雅さん?」 「ふふっ 郁弥をよろしくね?」 「こちらこそ、よろしくお願いします。」 染野先生が何度も頭を下げて挨拶する姿は キツツキみたいで面白かった。 知り合いらしい。 「母さん、帰ろぉ~ たっくんまたね?」 「郁弥、染野君に向かって『たっくん』は ないんじゃない?」 「母さん、たっくんに向かって『染野君』は ないんじゃない?」 「雅さん、勘弁してくださいよぉ。」 染野先生が真っ赤な顔をしていた。 俺は最後に教室を出た。 廊下にイクがいた。 「コウ?帰ろ?」 イクの右手は オレの左手に繋がれた。
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