◇5◇ 失った世界の景色

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   「おう。昨日からようやく出したんだよ。」 「そうだったの。」  隣で立ち尽くしている青年に椅子をポンポンと叩く。 「親父の調子が悪くてね。」 「大変だったのね。お大事に。」 「ありがとう。  ところでお兄ちゃんは、新顔だね。座りなよ。」 「こんばんは。月依さんに連れて来てもらいました。」 「そうかい。今後ともご贔屓に。」  2人は、会釈し合う。 「さてとお兄ちゃんは、なににする?」 「えーっと、味噌を下さい。」 「ふふ。」 「なに?」  彼女が笑っている意味が理解出来ない。 「やっぱり男の子ね。」 「そうですか?」 「ええ、この夜中に味噌が食べられるんだから。」  青年の注文したものに笑顔になる。 「若い子は、これくらいでいいんだよ。」 「そっか、そうよね。」  大将のフォローは、的を得ていた。 「月依ちゃんこそ、毎回同じでいいのかい?」   
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