◆6◆ 年下の男の子

5/15
前へ
/30ページ
次へ
    グラスを拭きながら指摘してみる。 「年末で商社は、忙しいの。いつもの倍働いてるから寝不足なの!」  ムキになって答えてしまった。 「そんなにムキになって・・・」 「なに、そのため息は!」 「相変わらず嘘が下手だなぁ、と思って。」 「〝嘘じゃない〟。本当に寝不足なんだから。」  もう1度強く言ってしまう。 「はいはい。仕事大変だなぁ。」 「あっ、馬鹿にしてる!」 「してない、してない。」 「もうっ!」 「すみませんね、皆さん。やかましいのが居て。」  周りに居る他の客にフォローを入れる。 「マスターも子守上手だね。」 「それ程でも。」  恨めしくカウンターの端から見つめている彼女を判っていながら常連たちと笑い合う。 「(子ども扱いしたわね!)   お酒ちょうだい!」 「だから・・・お前に飲ませる酒は、ない。」   
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

106人が本棚に入れています
本棚に追加