◇5◇ 失った世界の景色

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   「そうだけどバーに勤めるって大変でしょ。」  平常心を保ちつつ日常会話を心掛ける。 「あれ、覚えててくれたんですね。」 「えっ? (あっ・・・)」  口した後に初対面でないことを自ら告白したことに気が付いた。しかし今さら言い訳も出来ない。 「俺も覚えてます。マスターと仲いいですよね。」 「・・・そう、覚えてた。」  屈託のない笑顔に上手く返すことが出来ない。眩しく見える。 「はい。よくいらっしゃいますよね。」 「独身女が1人でバー通いかと思ってた?」 「まさか。来られたら付くようにしてたんですよ。」  少しムキになって返してしまった。 「そうだったんだ。あそこは、私が唯一行く場所なのよ。」  ムキになっている姿が可愛らしくてなぜか会話が弾む。   
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