138人が本棚に入れています
本棚に追加
少し迷うような沈黙の後、真がぽつりと問う。
「どうして相談しなかった。私は頼りないか?」
「まさか。充分、良くしてもらってるよ。でも忙しそうだから、邪魔になりたくなくて」
「何を言ってるんだ。これは、お前のためだと言ってるが、全部、私のエゴだ。ただの欲だ。お前と一緒にいたいし、生きていて欲しいし、可能ならいつか触れあいたい」
真は大樹の左手を握りしめて、罪を告白するかのように吐露する。
「お前を傷付けるものは許せない。私はまだ赤ん坊だったお前を見つけた時、絶対に守ると誓った。――それまで親のレールに沿って生きていくんだと、つまらないと思っていたのに。あの日から、世界は一変した。お前といるだけで、世界がこんなに輝く」
大樹の目が熱くなった。頬に湿った感触がする。
「こんなふうに誰かのためになる仕事ができているのは、お前のお陰だ。私の研究はお前だけではなく、大勢を救うだろう。――お前の功績だ」
「何それ、そんなわけないじゃないか。僕はここにいるだけなのに」
最初のコメントを投稿しよう!