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事務所からの移動中に、福富は車の窓から外を見ていた。
これからの事を考えれば、地獄絵図しか浮かばないはずだが福富は違った。
彼は生き残る事しか考えていなかった。
……とりあえず場所さえわかれば、携帯で位置を知らせられる。
それからどうするか……。
相手の数も気になるな。
こいつは……おそらくゲームだ。
九能という情報屋があちらにいるのなら、おれ達の居場所を見つけるのはそう難しい事じゃない。
皆殺しにするのだって簡単なはず。
おれを呼び出した理由は……金か。
奪ってから殺す気ならスジは通る……。
気になるのは八尋って奴だな。
桐野の専属の犯罪コーディネーター。
福富は、目を閉じてさらに思考を巡らせる。
この状況、おれが奴ならどうする?
考えろ、考えるんだ。
ともかく現状は桐野はワンサイドゲームだと思っているはず。
そこに必ず隙ができる。
福富を乗せた車は、桐野と東の待つ港倉庫に到着した。
入口でセットアップジャージ姿の男達にボディチェックをされ、所持品をすべて取られる。
身体を調べられながら福富は思う。
……当然こうなるよな、少し甘かった。
そう思いながら中に通されると、桐野が出迎えた。
「福富、よく来たな。まぁ飲め」
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