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……この男は拷問された後も、笑顔で話ができるような人間だ。
自分が死ぬ事を些細な事くらいに思っているのかもしれない。
しかし、助けに来てくれた人間も殺されるなら、話は別のはず。
勝たなければ仲間が死ぬ。
そんな事がわからないような人間には思えないのだが……。
六車はまたタックルをしかけるが、東はなんなくかわす。
しかし、今までとは違った。
六車は逃げる方向を誘導していたのだ。
そして、ついに組み付いた。
東の頭部を抱えるようにして、後頭部をがっちり押さえる。
東は下を向かされて、振りほどけない。
六車はそのまま東の腰を持って、無理やりマットに叩きつけた。
軽々と投げ飛ばされ、東がうめいていると、六車は背後に回り首を掴んでぐいぐい締め上る。
「せめてもの慈悲だ。苦しまずに殺す」
東は思う。
……絞め落とすつもりか!?
いや、このままだと首の骨が折られる!?
東は必死で抵抗するが、やはり力では振りほどけない。
「殺せ!! はやくやれ!!!」
桐野がご機嫌で大声をあげた。
締め上げられながら東は、足で六車の急所を打ち、腕に噛み付き、さらに耳を引っ張った。
怯んで離れた六車に、東は目潰しをしかけるが、六車はそれを振り払う。
「なんだあれ!? 卑怯者が!!」
桐野がヤジを飛ばす。
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