第20話 弱者の技術

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……この男は拷問された後も、笑顔で話ができるような人間だ。 自分が死ぬ事を些細な事くらいに思っているのかもしれない。 しかし、助けに来てくれた人間も殺されるなら、話は別のはず。 勝たなければ仲間が死ぬ。 そんな事がわからないような人間には思えないのだが……。 六車はまたタックルをしかけるが、東はなんなくかわす。 しかし、今までとは違った。 六車は逃げる方向を誘導していたのだ。 そして、ついに組み付いた。 東の頭部を抱えるようにして、後頭部をがっちり押さえる。 東は下を向かされて、振りほどけない。 六車はそのまま東の腰を持って、無理やりマットに叩きつけた。 軽々と投げ飛ばされ、東がうめいていると、六車は背後に回り首を掴んでぐいぐい締め上る。 「せめてもの慈悲だ。苦しまずに殺す」 東は思う。 ……絞め落とすつもりか!? いや、このままだと首の骨が折られる!? 東は必死で抵抗するが、やはり力では振りほどけない。 「殺せ!! はやくやれ!!!」 桐野がご機嫌で大声をあげた。 締め上げられながら東は、足で六車の急所を打ち、腕に噛み付き、さらに耳を引っ張った。 怯んで離れた六車に、東は目潰しをしかけるが、六車はそれを振り払う。 「なんだあれ!? 卑怯者が!!」 桐野がヤジを飛ばす。     
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