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「桐野さん、金網の中はルールないんだろ?」
福富が桐野の顔を見ずに言う。
「あんっ!?」
「なら、あれはありだ」
「ありねぇ。弱い奴はああいう手を使わないとダメだって事がありならよくわかった。けど、六車はあんなんじゃビビらねぇぞ」
福富は、薄ら笑いを浮かべる桐野に淡々と語る。
「わかってないな。あんた本当にヤクザか? ためらいなくああいう手を使うには素質がいるんだよ。単純な暴力性だけじゃない。緊急時での一瞬の判断。胆力の話だ。弱い奴にはああいう手は使えない」
胆力……しかし、これに関しても六車に方に分があった。
目潰しをされても怯む事なく、前に出る六車に東は間合いをとろうとするが、一気に間をつめられる。
「もう……覚えたぞ。あんたのやり方」
東は下がろうとするが、コーナーに追い詰められてしまった。
両手の拳を構えながら、じりじりと近づいて来る六車は言う。
「おれは、さっきのを卑怯だとは思わない。命がけの試合に汚いなどない。あんたが最初からおれを殺す気でやっていたら、負けはしなくとも致命傷は避けれなかっただろう。でも、もう遅い。終わりだ。今のあんたの力でおれに勝つのは無理だ」
逃げ場のない東に、六車はかわされ続けたラッシュをしかける。
連打、連打、連打。
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