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「だから、金網の中はルールはないんだろ? それなら、これもありだ」
「てめぇがそう出るなら、こっちも……」
「おいおい桐野さん。金網の中は“なんでもあり”だろ? それが唯一のルールのはず。もしあんたが、それを破ったら賭けは無しだ。なにをされても金の場所は言わない」
桐野は、怒りのあまり震えていた。
心の中で、いつも、いつも、こうだとぶちキレる。
「親父……」
六車は桐野に声をかけ、頷く。
桐野は思う。
……そうだ。
大丈夫、六車は無敵だ。
あいつが負けるはずがない。
大丈夫、大丈夫だ。
でも、もし、負けたら……いや、そん時は、マエガミも福富も殺せばいい。
金は時間をかければ見つかるさ。
桐野が落ち着こうと自分に言い聞かせていると……。
次の瞬間に福富は、最初に飲めと言われたビール瓶をポケットから取り出し、それを足で割ってマットにばらまく。
破片がリング内に飛び散り、福富は言う。
「桐野さん。ビールご馳走様でした」
冷静になろうとしていた桐野は、その挑発に激昂した。
おれがやったビールを……?
どこからリングに上がる事を考えていたんだ。
ご馳走様だと、なめやがって。ちくしょぉ!!!
桐野は、そこら辺のものに八つ当たり、まるで子供のようにわめき散らす。
「福富ぃぃぃぃぃっ!!!」
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