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もはや桐野の頭は、怒りにより思考停止になっていた。
六車は裸足、福富は靴を履いている。
誰がどう見ても裸足では不利だ。
体格も、福富は身長189cm 体重78kgと東ほど六車に負けてない。
「ありゃ~、とんでもない事になりましたね。福富氏にいい様にされてるな」
九能はとぼけた声を出すと、八尋が興奮した様子で言う。
「想像もしなかった展開です。福富優一はやはり面白い」
「この流れだと、仕込んでいた携帯を使わないんじゃないでしょうか?」
「そうかもしれませんね。ぼくも、この先がわからなくなりましたよ。初めてだな、こんな事は」
八尋と九能が、推理ドラマでも見るような様子でハラハラと観戦していた。
一方、六車は頷いていたものの、足元の破片に動きが躊躇していた。
動くと必ず踏んでしまい、動作が鈍る。
そこを福富はヒット・アンド・アウェイ。
一発入れては下がるを繰り返していた。
六車は思う。
……こいつも東もそうだが、おれの方が、技術も腕力も上なのにどうして思い通りにならないんだ。
今までこんな事はなかったのに……。
ここで六車が急に吼えた。
「おれの方が確実に強いのにっ!? なぜだ!?」
福富は攻撃を続けながら言った。
「試合なら、お前の方が強いよ」
「なら……なぜ!?」
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