第21話 強さとは

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今度は手を止めて、間合いを取りながら、静かに言う。 「しかし、命をかけた戦いならおれの方が強い。お前はこれまで復讐屋として、リングに上がる処刑人として、そして人間を狩る立場として相手を仕留めてきたが、こうやって対峙するのは初めてだろう? つまり、今まではお前にとってフェアだったという事だ」 スーツにできたシワを直しながら、福富は続ける。 「意味はわかるか? 技と力だけで勝てるのはスポーツなんだよ。“殺しは慣れていても殺し合いは初めてだろ?”それでは勝てない。このまま、続けるならお前は負ける」 福富はわざわざ長い話をした。 六車は考える。 ……子供の頃からおれは強かった。 誰もおれに勝てなかった。 昔、桐野の親父にやられたように、集団で銃でも使われない限り負ける事はないと思っていた。 本は読むか? こいつは言った。 おれは読む。 この男とおれの差はなんだ? 六車は、まるで全身を脳みそにするように考えを巡らせた。 そして答えを出す。 …………そうか……わかった。 「福富……」 声をかけられ、六車を見ると福富は驚く。 そこにいたのは、追い詰められた紳士ではなかった。 顔からは感情が消え、呼吸を深く吸い、身体の固さはなくなり、目つきだけが鋭くなる。     
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