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今までのオーソドックスな構えから、象、馬、蛇、獅子、猪、孔雀、鶏、猫、魚、水牛、虎を思わせる構えに次々と切り替わる六車。
そしてジリジリと福富に近づく。
その構えは膝くらいまで腰を落としたもので、筋骨隆々な身体からは想像できないほどの身体の柔らかさをものがたっていた。
その様子を、意識を取り戻した東が見て驚く。
「カラリだ……」
「カラリ? なんだそれは」
東に聞く福富。
「インドの武術だよ。一度だけ見た事ある」
東がそう言うと、六車の巨体が宙を舞った。
軽やかに、そして高く。
ひねりや回転を加え、人とは思えないほど跳躍する。
そして福富に蹴りが入るが、両腕でガードされる。
福富は間合いを取り、六車はまたジリジリと近づく。
福富は、今の六車の蹴りを受けて思う。
……オーソドックスな構えのときは歩いて距離を近づけてきたが、今のように跳躍し攻撃できるなら、足が地面に着く面積を最小限にできるわけだ。
マットすべてに破片があるわけじゃない……やばいな。
福富が冷や汗をかいていると、東が叫ぶ。
「福富くん!! 気をつけて、おれが見た事あるカラリは、足がムチみたいにしなって、ありえない角度から飛んでくる」
「あ、そう」
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