第22話 車輪の下じき

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「つかんでの間接、投げもあるよ!!」 「はいよ」 六車がまた宙を舞い蹴りを仕掛けてくる。 そして福富の予想通りに距離はつめられた。 六車の蹴りは避けた後に軌道を変えて飛んでくる。 軌道の読めない攻撃が、徐々に福富にヒットしはじめた。 荒川から空手の基本を教えてもらい、それを自分なりの喧嘩術で鍛えてきた。 週5日はジムに行き、自宅でもトレーニング器具で本格的にやっているが、それでも、まともにぶつかれば六車の方が強い。 追い詰められた福富は言う。 「お前、息を切らせてたのに、なんでそんなタフなんだ」 「もう小細工はないのか?」 「どうかな? お前、本読むんだよな。今読んでいるのは?」 福富は聞くが、六車は答えない。 身体を回転させて近づき、そのまま足を上から振り落とすと肩口に当たり、福富が崩れ落ちる。 首付近に激痛が走る。 鎖骨が折れたのがわかったが、腰を落としながらも、なんとか転がり後ろに下がる。 六車はさっきの質問に答えた。 「『車輪の下』だ」 「……あ、そう」 痛みで表情が少し歪む福富を見て、六車は続ける。 「読んでいて知った事なんだが、ドイツ語で落ちこぼれることを表す慣用句は……」 「車輪の下じきになってしまう……だろ」 六車の言葉を遮って言う福富。     
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