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――今日はこれから葬式だ。
少し前に海外にいっていて、日本を出る前にお世話になった人が亡くなった。
東京都世田谷某所。
何年も袖を通していなかったスーツで出席した。
葬儀場かなり大きく、葬儀参列者達の波ができていたので問題なかったが、もし誰もいなかったら広すぎて迷いそうだ。
会場には、いかにもな強面の集団や、水商売風の派手な化粧をした喪服の女性達、上品な黒を纏う老婆、セーラー服やブレザーを着た女の子達などが大勢いる。
幅広い年齢の女性が多いのを見ると、あの人らしいと、少し笑えた。
まぁ、式には出るつもりではいたけど。
正直いきたくなかった。それは……。
「おいっ!? あの色白……まちがいねぇ……奴だ」
線香をあげて帰ろうとしたら、数十人くらいの強面の集団に囲まれた。
喪服姿の男達はこちらを睨みつけて言う。
「よく来れたもんだなぁ。あぁっ!! コラァ!!」
昔の不良漫画みたいな台詞が飛んでくる。
なんだこれ?ずいぶん色気のないファンタジーだな。
はぁ……やっぱり来なければよかった。
男達がジリジリと近づいて来る。
その時、緊張感のない大きな声が聞こえた。
「は~いストップ!! 酷いなぁ。相手はひとりだよ、こっち何人いるの?」
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