270人が本棚に入れています
本棚に追加
福富優一。
この式で眠っている鳥居仁さんの部下で、個人的にあまりいい思い出がある人じゃなかった。
助かった……と思ったけど。
おれを探している?
あの人とは色々あって会いたくないんだよ……。
とりあえずこの緑川という人にお礼を言おうと思った。
「あの……ありがとうございます。おかげで助かりました」
「おっ!? ちゃんとお礼言えるなんて偉いね。それにしても顔白いなぁ。女の人みたいな肌してる」
そう言って彼はおれの頬を優しく触る。
「おぉっ!!! すごい!!! スベスベで柔らかくておっぱいみたい」
その緑川という人のふざけた姿勢は変わらず。
しかしなぜか触れられてドキドキした。
おれはそっちの人間じゃない……いや、もしかして、いやいや、と自問自答していていたら……。
「悪かったね。彼らも悪いやつらじゃないんだけど……。まぁ、きみもよく来れたね」
そう聞かれ、何も答えられずに、ただ俯いてしまった。
「じゃあいこうか。福富くんが待ってる」
そして緑川と呼ばれる男に奥の部屋へ連れていかれた。
「連れて来たよ」
部屋には、無表情の男とさわやかな感じの男。それに髪の短い女がいた。
無表情の男が言う。
「わざわざありがとう、緑川くん」
「たまたま会えただけだよ。それじゃおれ帰るから」
「あぁ、今度焼肉でもどうだ?」
「肉好きだね~福富くんは」
そういって緑川という男は部屋を出ていった。帰り際にウィンクをして……。
無表情の男は声をかけてきた。
「久しぶりだな、東」
……部屋に入った時は気が付かなかったけど。
無表情の男は福富くんだった。
「福富……くん? だよね? なんか全然変わっちゃってわからなかったよ」
「そういうお前は変わらないな。おい荒川、新庄、悪いけど二人にしてくれ」
福富くんが、2人を見て言った
「えぇ!!! なんで?いいじゃんあたし達いたって」
荒川と呼ばれた髪の短い女が、だだをこね始めた。
「いこう靖子、優一だっておれ達がいたら話しづらい事もあるよ」
新庄と呼ばれたさわやかな感じの男が、ポケットからカロリーメイト(チーズ)を取り出して、口に加えながら髪の短い女に言う。
「へっ」
「じゃあ優一、おれ達出るよ」
「あっ!! 福ちゃん。社長就任パーティーは焼肉でいいんだろ?」
最初のコメントを投稿しよう!