270人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
荒川に話を振る蟹江。
鳥居仁が社長時代には、こんなことはなかった。
福富優一をなめくさって喰い物にしようとしているこのヤクザに対する怒りを堪えるのに必死
で、荒川の手はひざの上で思いきり握り締められていた。
「はぁ(死なねぇかな、このカニ)」
荒川は、適当に返事をしながら思った。
「だよな。じゃあ、そういうわけで、来月には頼むわ、社長」
「来月……。では、仕事があるので、これで……」
「返事がねぇぞ。わかってんのか!! 福富!! あんっ!!」
怒鳴られた福富はイスから立ち上がり、桐野に近づく。
向かってくる福富を睨みつける桐野。
福富は睨み返して言う。
「桐野さん、あんた、本は読むか?」
福富のセリフに苛立つ桐野は怒鳴りつける。
「あんっ!? 相変わらずムカつくな、おめぇはよ」
ふたりが言い合っていると、やれやれといった表情を浮かべた蟹江が止めに入る。
「拓やめろ、社長とは仲良くしろよ」
「ちっ」
舌打ちをする桐野。
「読まないんだな? そう…………失礼しました」
福富はそう言うと、荒川とその場をは立ち去った。
その帰り道……。
「福ちゃんどうすんだよ? 蟹の野郎、あたし達をカモにしようとしてるよ」
「ああ、わかってる」
最初のコメントを投稿しよう!