第5話 喰い物

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「鳥居さんの時はビビってたくせに。それに桐野の野郎もよ。なんだったらこっちからいく? あたしはもう我慢の限界。ムカついて腹ペコだ。落ち目のヤクザなんて食ってやるよ!!!」 荒川は歯を剥き出しにして言うと、福富が落ち着くように言う。 「荒川、リラックスリラックス、それは最終手段だ。暴対法で勢力が落ちてるといってもなめてかかれない。勝っても得るものはないしな」 「でも、来月だよ」 表情を変え、心配そうにする荒川へ、福富は言う。 「それより、闇金は大丈夫か? 最近は派手にやってるみたいだから、かなり有名人になっているぞ。だから蟹江の耳にも入ったんだろ」 「へっ、福ちゃんが心配するほどの事じゃないよ」 「そうか……でも、なにかあったら小さな事でも話してくれ。ホウ・レン・ソウは基本だからな」 福富の言葉を聞いて、荒川は思う。 ……嬉しいけど、人の心配をしている場合じゃないのに。 でも、きっと福ちゃんには考えがあるんだ。 先に歩きだした福富の背中を見ながら、荒川は思う。 ……いつだってなにか考えている人だから。 あたしが認める男はフクちゃんだけ……だからこの人の夢を手伝う。 誰にも邪魔させてたまるか。 置いていかれそうになった荒川は、福富を追いかけながら昔の事を思い出す。     
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