第6話 幸福を守るため

3/11
271人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
むかしむかしあるところに、ちちおやのいないおんなのこがいました。 おんなのこは、まいにちははおやにたたかれ、しまいには、おんなのこをおいていなくなってしまいました。 そのあとは、しんせきのいえをたらいまわしにされて、どこのいえでも、がっこうでも、おんなのこはきらわれていました。 さいごはしせつにおくられて、そこでもきらわれていました。 そんなおんなのこのたのしみは、ひとりでてれびをみることでした。 あるひ、てれびがいったのです。 「いつかおうじさまがあらわれて、あなたをしあわせにしてくれます」 おんなのこはいいました。 「しあわせにしてくれるならなんでもする。あたしぜったい、おうじさまからはなれない」 寒い朝、荒川靖子は目が覚めた。 子どもの時に見た夢をみてなにか小っ恥ずかしい気分になる。 今日は土曜だから休日出勤……と言っても、彼女には休みがない。 だからいつもの出勤と同じだ。 誰にも強制されず、荒川自身が休まず仕事をしている。 これがあたしの生きる道、と思っているからだ。 こう見えて趣味はマンガとアニメ。 あとは料理。荒川の部屋はキャラクターグッズと料理器具で埋まっている。 「なんで、あんなガキの頃に見た夢を……」     
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!