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そう思いながら、仕事着のスーツに着替える。
福富の会社はみんな黒系のスーツ。
これは福富が決めたのではなく、荒川の趣味だ。
誰も反対しなかったのもあり(なぜか真奈美は喜んでいた) 特に社内規則ではないが、みんなこれを守っている。
今日は土曜なので、東が来ているはず。
福ちゃんはなんであんなのを……。
荒川は考える。
……慣れてきたのもあるが、仕事は、まぁそこそこできている。
かといって特別できるわけでもない。
うちは全員エース……のはずだったが、まぁ、それは仕方がない。
それより気になるのが、東……あいつの目だ。
荒川は経験や勘で、目を見ればどんな人間か大体わかると自負している。
そんな彼女の見立てでは、東は死人。
普通の人間には、薄いか濃いかの違いがあっても、必ず色がある。
目に色がない人間は、死人だけ。生きている人間ではありえない。
判定不可能な人間を荒川は嫌った。
福富を変えた男。
荒川はそれだけでも気に入らない。
「ったく、なんなんだあのゲイ野郎は」
鏡を見ながら、独り言を言う荒川。
女性の初対面の印象はなかなか消せない。
「でも、福ちゃんのオーダーは絶対!!!」
荒川は、壁に貼ってあるアニメキャラのポスターに向かって、自分を納得させようと意気込む。
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