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「三人でメシでもいって来いよ。こっちは適当に終わらせておくからさ」
笑顔で言う草薙を見て、荒川は思う。
……いつもそう言って、損な役回りを引き受けるとこがあるんだよな。このじいさん……。
薙さんは、あたしの知っている限り、この世で一番力加減がうまい。仕事も、対人関係も……。
真奈美、新庄もそうだが、福ちゃんの人選は力の抜けている人間が多い。
あたし以外……。
「じゃあ、お願いします!!!」
真奈美はそう言うと、無理やりあたし達を外へ連れ出そうとした。
「荒川、先は長いぞ。わけぇのに焦るなよ」
草薙は適当に言っているのだろうが、荒川には妙に意味がある気がした。
事務所を出てから飲む店を探していると、東がタバコを買いにいく言い、待たされる。
荒川は待たされている間、顔を歪めて思う。
……タバコなんて吸うなよ。
似合ってねぇし、似合ってた福ちゃんはやめたぞ。
心で悪態をつきながら待つ間に周りを見渡すと、冬の街はすっかりイルミネーションだらけだ。
それを見ながら真奈美は目を輝かせていた。
不思議ちゃんでもやはり年頃の女の子。
キラキラした幻想的なものが好きなのだろう。
あたしも年頃っちゃ、年頃だけど……。
「いいなぁ、あたしも恋人とこういう雰囲気の場所ですごしたいなぁ」
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