第6話 幸福を守るため

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肝心の店は、今日は福富がいないので、いつもの焼肉はやめてホルモンに行きたいと真奈美が言う。 「新鮮モツ食べ放題!!!」 荒川は、さっき仕事の休憩中に『カニバリズム論』とかいうを本読んでいた真奈美が新鮮モツと言うと、食欲が失せた。 気持ち悪くなった荒川は、急に思い出す。 ……そういえば福ちゃんの話では、東は海外で死体の山の横で水浴びをして、普通にカレーを食べていたとか……。 荒川は、その時に聞いた福富の言葉を頭に浮かべる。 あいつは人の骨もインスタントラーメンみたいに折るからな。 才能だよ、冷静に人間の骨を折るのってのは。 荒川は思う。 ……真奈美も同じタイプかもしれない、そういう鈍感さは。 とりあえず、モツ、カレー、ラーメンは食べたくなくなったな。 「え~モツダメです!? じゃあどこへ?」 真奈美がそう言っても、東は何も言わない。 店を選ぶ時、いつも東は黙っている。 いつまでも場所が決まらないので、荒川が提案する。 「しょうがねぇ、あたしのうちで飲むか?」 誰も反対しなかったので、荒川の家で飲む事になった。 家飲みが終わり、ふたりが帰った後に荒川は思う。 ……家飲みはそれなりに楽しかったな。 うちに人を入れたのは初めてだ。 次は福ちゃんも……。 荒川は、福富の事を考えていた。 ……あたしが守ってやる。     
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