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福富が急に言い出した。
「いいね優一。埼玉観光しよう」
新庄は笑顔でそれに答えると、福富が東に言う。
「もちろんお前もだ、東」
「断っていい?」
「絶対連れていく」
東は思う。
……まったく逆のタイプのふたりが仲良くなるのは、ドラマや映画ではありそうだけど。
不良と優等生は一緒にいれなさそうだよね。
でも、友だちがいないもの同士ってのは共通点ではあるのか……。
そう東が考えているうちに、本社に到着した。
高層ビルのようなものを想像していたが、なにもない敷地に無理やりでかい建物を建てたという感じの社屋だった。
中には入り奥に進んでいく途中で、女性の姿が見えた。
「千草さん!」
福富は一礼をした。
いつも無表情の顔がほころぶ。
新庄が東に、目の前の女性が誰かを小声で教えた。
和久井千草。
凛とした顔立ちに、センターでわけたストレートロングの黒髪、パンツスタイルのスーツ。
開襟シャツの着こなしがキャリアウーマンという感じの女性だ。
社歴は福富より長く、この会社の重鎮らしい。
驚いたのは鳥居仁の元恋人で、福富の憧れの人だと聞いた事だ。
「頑張っているみたいね。桃さんが褒めてたわ」
鋭い目つきを、柔らかくして言う千草。
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