第7話 同期の桜

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福富は無表情だが、いつもより高い声で返す。 「会長が?」 「えぇ、でも、あの優一くんが今や社長だもんね。なんだか差をつけられちゃったな」 「差なんて……そんな。千草さんは本社勤務ですし、昔から女帝と言われてる最高部長じゃないですか」 「それって褒めてる? 全然嬉しくないよ、女帝ってさ。それに、さんはいらないわよ。歳もあなたのほうが上だし、役職も上になったんだから」 「それでも千草さんは先輩ですから……」 「そういうところは変わらないのね。頑張るのはカッコいいけど、あまり無理しちゃダメよ」 その時に、もうひとり男がやってきた。 髪を逆立てたスーツ姿の男。 男は不機嫌そうに言う。 「なんスか? 和久井部長。おれとは仕事の話以外してくれないのに、福とは喋るんスか?」 そう言われた千草の表情が一気に冷たくなる。 「海老原……うるさい」 感情がのっていない声で千草が言った。 「なんでっスか? おれなにかしました? 冷た過ぎるでしょ?」 そういうと千草は、恐ろしい形相で男を見る。 すると海老原という男は落ち込ん顔をして黙ってしまった。 「またね、優一くん、新庄さん。あっ!? あとそっちの子も今度紹介して」     
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