第9話 怪物

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この国はなにでできているんだ? 善か、それとも悪か? 善は悪より強いか? 悪は善より強いか? どちらがどちらにも飲み込まれる……。 おれの父親は子どもの頃に死んだ。 日本人だった。 父が死んだ後に母親に突然知らない国に連れてこられ、知らない人を父と紹介され、知らない言葉を話す人間が家族になった。 死んだ本当の父親の事はあまり覚えていない。 ただ、教えてもらった事は覚えている。 武術だ。 死んだ父親は坊主だった。 なぜ小さいおれにそんなものを教えたのか? しかしこの国で暮らすようになってからは何よりも役立っている。 幼少期の思い出はニューデリーで身体を鍛えていた事だけ……それだけだ。 日本に住んでから、新しい父は母を毎日のように殴りつけた。 だからおれはそいつを殺した。 母は少年院に一度も面会に来なかった。 仕方がないと思う反面、ひどく寂しかったが……。 出所後、母を探した。 会う気はなかったが、顔だけでも見たかったのだ。 探しあてた時、母は新しい男と新しい子ども……家族を作っていた。 それを見たおれは、母の新しい家族を全員殺した。 それから荒れた生活をしている中で暴力団と揉めてさらわれた時、おれはある人に助けられる。     
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