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「話をまとめよう。恵まれない人たち……いや、ある種の欠陥……いや、何か忘れてしまった感情を抱えている人間に効果があるカリスマ。マエガミは、イエス・キリストって事になるのか?」
答えない福富を見て、橘が時計に気が付いて言う。
「うん!? おっと、もうこんな時間だ。福富は明日早いんだろう?」
「先生と話していると時間を早く感じます」
そう言い、頭を下げる福富。
「老人のおれには嬉しいセリフだよ。よければまた来なさい」
「はい。今日はありがとうございました」
「福富……あまり依存するな。このままだと、譲治とナオミのようになるぞ」
「『痴人の愛』ですか。別にあいつをそういう目で見ているわけじゃないのですが……」
「ふふ、くれぐれも気をつけろよ」
「はい、気をつけます。では失礼しました」
福富が部屋を出ていく。
一人部屋に残った橘は思う。
……人はいくらでも変われるものだね。
数字もろくに扱えない、漢字も読めない男が、あそこまで教養を身につけられるとは……。
福富は論文でも書かせれば博士号を取れる男になった。
歳をとって驚く事も減ったが、人生はまだまだ面白い。
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