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……母親が質の悪い連中にあたしを売った時、「おまえが望むならこの状況は変わる」と言って助けてくれた。
目の前の状況を変えれるのは、自分の意志だけだと教えてくれた人だから……。
急に立ち止まった福富は、荒川に聞く。
「昼食にするか?」
「いいね。知り合いに聞いた店で、うまいビーフカレー出すとこあんだよ」
嬉しそうに言う荒川。
しかし、福富はその案を流す。
「あ、そう。中華にするか?」
「なにそれ? ひどっ」
「なんだカレーがいいのか?」
聞かれた荒川は、適当に頷く。
「へいへい。中華でいいよ」
「返事は……」
「へ~い。ははは」
福富とのいつものやりとりをして、つい笑ってしまった荒川。
荒川は思う。
……あたしはいま幸せだ。
ずっと、ずっとこれが続くといいな。
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