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その時ようやく何かおかしいと気づいた。走っていた足が自然に遅くなる。私は緑色の二階建ての家に通路を通した建築の中に入った。左を向いたら階段と小さな店があった。その時、とても懐かしい、実家に帰ったような気がした。
小さな店のドアは木枠の硝子戸。硝子は霞んで綺麗とは言えなかった。夕日が硝子を反射させる。古い匂いがした。
吸い寄せられるかのように戸に手をかけ、建て付けが悪いのか重い硝子戸を引いた。四畳も有るのか無いのかというくらいの小さな店だった。ショウケース付きのカウンターがあった。それは木製で少しだけ埃をかぶっていた。夏の匂いがした。
「いらっしゃい。」
中には2人の男がいた。1人はカウンターの中に、1人は客なのかカウンターの外にいる。
ショウケースの中には小さな宝石たちが並んでいた。夕日に照らされて、いつもとは違う色に輝いている。
カウンターの中の男は、細身で顔の整ったか細い男だった。目は潤んだサファイアのように綺麗に光っていた。店主だろう、私はそう思った。
外にいた男は、ある程度鍛えられた体で、骨格の良い男らしい顔をしていた。
店主らしき男は、
「何か探し物?」
と聞いてきた。
「いえ、概観だったので入っただけなんですが…」
私は少し微笑みながら言った。
「飛んだ勘違いだな、ここはある程度のモノしか入れないぞ…」
カウンターの外にいた男が腕を組み壁へ掛かってそう言った。私にはその言葉の意味がわからなかった。
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