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私から冷や汗が出た。この人はどこまで私の事が見えているんだろうか、そう思えて仕方がなかった。
「…いえ、帰ります。」
私ははっきりと断った。店主は表情を変えずに、そうかいと頷いた。もう1人は無言で立っていた。
家の屋根に夕日が差し掛かった。帰らなければ、私は窓の外を見ながら思った。
「帰るのならここを出て、左。通路を真っ直ぐに進めば“元の世界”への戻れる…」
そう言い終えると店主は、「はいっ」と何かを置いた。それは、黄緑に光る宝石だった。影になったところは深い緑色になっていた。
「これは、ダイオプサイト。きっと“元の世界”へ戻る道しるべに並ばずだよ…」
丸く削られたダイオプサイトを私はポケットの中にしまい込んだ。夕日が家の奥へと沈んでいくのが見えた。
少しだけ誇らしい気持ちで店を出た。わたしは急がなければと思いながら走り出した。
そうして、目が覚める。
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