時隠し

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 それから数ヶ月ほど、学校を休みがちになります。  好きな男の子も、仲の良い渋谷さんも消えてしまうかもしれない。久保さんが消えたと知っている私も消えてしまうのかも。  クラスメイトが消えた恐怖……しかもそれを知っているのが自分だけという恐怖は、私を学校から遠ざけるには十分でした。  それに、自分の頭がおかしくなってしまったという恐怖もありました。みんなの言うように久保さんなんて初めからいなくて、いま見えているものも本当はないのではないか、と。  様々な恐怖がないまぜになって質量を持ち、私を蝕みました。  けれどその後、他のクラスメイトが消えるわけでも、目に見えないものが見えるようになるわけでもありません。  時が経つにつれて、全てはただの思い違いであったと納得できるようになりました。幼いころ特有の現実と空想が入り交じるような感覚……そう結論づけたのです。
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