時隠し

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 居ても立ってもいられなくなり、気分が悪くなったと早退して近くの大きな本屋へ向かいました。  道中でスマホを使って○○について検索しましたが、5人目のメンバーAの存在は確認できません。  祈るような思いで本屋にある芸能系の雑誌や単行本を端から確認していきましたが、どこにもAの姿は写っていない。  諦めきれず、レンタルショップへ行って○○のCDを全て借りましたが、結果は同じ。  久保さんのときとはわけが違います。本やCDなど形に残るものがあるのにも関わらず、影すら追うことができない。  Aは昔好きだった映画に出演していて、高校のときは友達とよくAについて話していた。テレビ番組で歌って踊っている姿も何度となく見てきた。顔や声は、はっきりと思い出すことができる。  こんなにも鮮明な記憶があるのに、Aが存在しないなんて私の頭はまた壊れてしまったのか。  それとも、久保さんのときからずっと壊れたままだったのか。  恐怖に突き動かされながら、一縷の望みに縋るようにインターネットで検索を続けました。  ○○が所属している芸能事務所の公式サイトを始め、Aが出演していたはずのドラマや映画を思い起こしては調べ、個人が運営する○○のファンブログまで確認しました。  一睡もせず夜通しで画面を見つめ続け、空が白んできたころ。あるSNSの投稿を見つけました。 「○○にAっていたよね! やばいマジで怖い」  10歳のときから数えても初めて見つけることができた、消失にまつわる共有。嬉しさよりも、椅子から滑り落ちそうになるほど気が抜けました。
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