ビジネスホテルの悪い夢

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 いやだ。こんな理不尽な目に遭うのはいやだ。それでもどうしてもミッションをこなさなければならないというのなら、せめて一人で挑ませてほしい。  昨日も今日も、自分ではどうにもならない理不尽さの連続だ。  たまたま選ばれた数字の部屋の人間が死ぬ。  他人の行動が理由で、自分がどう頑張っても無駄な足掻きとなって死ぬ。  そんなのは真っ平だ。どうせ命を賭けなければならないのなら、自分の命は自分の手でどうにかできる形の不条理に晒されたい。   この状況から逃げられないのなら、せめて明日のミッションは個人で。  疲れ果てた俺の意識に存在するのはその気持ちだけだった。 * * *    昨夜の気持ちが通じたかのように、三日目のミッションは個人で挑むものだった。  それなりに難易度は高かったが、他人と関わるものより理不尽さは低い気がする。  そんな状態だったから、クリアの後に思ったのは、なることならば明日も一人で、だった。  生き延びるために他の誰かの手を求めず、自分の力だけで事を成し遂げる。それならば誰に足を引っ張られることもないし恨み合うこともない。  俺がこんな考えを持つようになったのは、どうやらこのホテルで行われている非道なミッションは、数日で終わりそうだという憶測を抱いたからだ。  最初の日、俺は最上階である十階に泊まり、翌日同じ階で初のミッションに挑まされた。その後、同じ部屋で眠りについたのだが、翌朝のモーニングコールで部屋を出ると、封筒には九百番台…つまり、一階下のフロアを示す鍵が入っていたのだ。  眠っている間に運び出されたのか、はたまたフロア全体に仕掛けがあって丸ごと一層下がったのかは判らないけれど、俺の見立てでは、日ごとにミッションの行われるフロアは一階ずつ下に移っている。  初日のフロントの様子を思い出す限り、このホテルはだだっ広いが一階に客室はない。つまり九日目の二階がミッションとしては最終となるだろう。  そこまで生き延びればきっと助かる。確信はないが、それを信じることが今の俺の心の拠り所だ。  おそらく九日で終了すだろう殺人ミッション。それが、自分ではどうにもならない理不尽さで途中終了しないよう、できたら明日も一人のミッションがいい。いや、なることなら九日目までずっと個人ミッションに挑みたい。こんな極限状態で誰かに気を使うのも足手まといになられるのもたくさんだ。
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