ビジネスホテルの悪い夢

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 命が賭かっているからこそのエゴ。それを悪いことだとは思わない程度に俺の意識は披露し、総ての間隔は麻痺しきっていた。 * * *  廊下に現れる顔触れは初日と比べてもう五分の一にも満たない数だ。  あの日ここに泊まった面々のほとんどが昨日までに理不尽なミッションで命を落とした。けれどそれもきっと今日限りだ。  封筒の中に入れられた二百番台の鍵と指示の用紙。それに若干口元が歪む。  こんなミッションに参加させられている時点で言うことではないが、三日目以降ずっと運よく一人行動だ。  他人が絡んだための理不尽さに乱されることなく、ついに俺は二階まで辿り着いた。  客室フロアはここまでだから、必然的に今日のミッションをクリアすればこの不可解且つ不条理なデスゲームは幕を閉じるだろう。  いったい誰が何のためにこんなことを仕組み、強制的に俺達を参加させたのか。  生き延びたいと願う意思は、半ば以上その理由を知るために振り絞られていた。  十日近く同じホテルに宿泊していても、ミッションで関わったとしても誰かと親しくなったりはなかったから、死んだ人達のためになんておためごかしは言わない。  俺は俺を巻き込んだこの殺人ゲームが、どういう理由で開催され、何故俺が参加者に選ばれたのかを知りたいのだ。  その目的のためにも、絶対に今日のミッションはクリアする。  そう決意したところで目が覚めた。  …俺は? 今のは…ああ、どうやら夢を見ていたらしい。  今日という日を生き延びて終えることができれば、きっと総ての真相が明らかになる。その意気込みが強すぎて夢を見ていたようだ。  きちんと目を覚まし、本日で最後になるだろう因縁のミッションに挑もう。  そう胸に誓った瞬間、電話の音が鳴った。  反射で受話器を取る。聞こえる無機質な声はいつものモーニングコールだ。  一度目から二度目の間隔は短く、二度目が鳴ってから退室まで三分しか時間がない。そんな切羽詰まった限時間内に慌ただしく可能な身支度を整え、部屋の外に出る。  部屋の前に置かれた封筒を拾い上げ、中身を確かめる。俺の名前とミッション内容。同封されているのは三百番台のルームナンバーが記されたカギだ。  三百番台? 今いるフロアは二階だろう? 数字が間違っている。  いや、今日は何日目だ?
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