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「だからお前は負けるんだよ。男とか女とか、個性がなければ、お前が『お前である』と認識される根拠を失う。お前がどこの誰かと区別できないんだったら、わざわざ『居る』必要もない」
「私は30億人類の総和なのだ」
「お前以外に人類はいなくなるんだよね? 伝える相手がいないのに、どうしてお前は『お前である』という情報を持つ義務があるの?」
「宇宙は広い。何処かに必ずや」
「それって確かなことなの? ぼっちと同義じゃないの?」
「お前に何が判る。人類は一つになったのだ。多様にして合一。それがメタルノーツだ」
そこまで言わせて、柊は不毛な議論を打ち切った。
「じゃあ、僕が正してあげるよ」
彼は意志の力で脳下垂体に働きかけた。柊シリーズ独自の分解酵素を分泌させ、人間ど同じ遺伝情報をメタルノーツに注入した。
単一生殖生命体である『彼女』は柊のY染色体という不純物を注入され、大混乱に陥った。
「そんな……あんなのと結婚するなんて!」
椿は絶望のあまり、意識を手放した。
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