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ここに椿柊兄妹の悲劇が幕をあける。
ぎらつく太陽が無数の骸骨を火刑にしている。虚空の憎悪を絞め殺すため無数の指が天空をつかむ。
だが、それらは微動だにしていない。陽光が明度を増してすべてが漂白された。
燃えている。
ごうごうと原生林が燃えている。
沃野は地の底まで乾燥し、熱気が山脈を超えて海を干した。
フェーン現象が麓の街を焼き尽くしている。
火炎地獄の真っただ中に会話が聞こえた。
「一網打尽にしたか?」
「いえ、殲滅は完了していません」
「さっさと掃討しろ!」
人の形をした金属が地獄絵図を反射している。バリバリと音を立てて崩れる教会。その庭先には立ったまま燃える親子がいた。
「稼働数を把握しておけと言っただろうが!」
リーダー格らしき人型が声を荒げる。
「等比級数的に巧妙化しているんですよ。擬態か生身か殺ってみるまでわからない」
部下とおぼしき金属体が反論する。
「じゃあ皆殺しにしろ!」
リーダーの腕がにゅっと盛り上がり、漏斗状の口が開いた。閃光が燃え盛る家屋を薙ぎ払うと、通りの向こう側で爆発が起きた。
ドンドンと地響きがして、破片やタイヤが飛んできた。金属体の別派が横転した車両を取り囲んで、火炎を浴びせている。
「おうい、そっちはどうか?!」
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