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なにもかんがえたくない、なにもみたくない。 なにもききたくない、なにもかんがえたくない。 綿貫の頭の中はその思いでいっぱいだった。 なにもない部屋の中で虚空を見つめて数時間。 ふと、引き出しからカッターナイフを取り出した。 そこからはあっという間だった。 左手首に刃を当て、力を込めて引く。 手首から血が流れ出る。 綿貫は流れ出る血を見つめながら、これでもうなにも考えなくてすむと安堵していた。 そのままどれくらいぼうっとしていただろうか、合鍵で部屋に誰かが入ってくる音がした。 「…怜っ!」 綿貫は入って来た人間の顔を見ることをしなかったが、声だけでわかった。 彼女だった。 血の流れる手首を見つめつづける綿貫に代わり、彼女は冷静に止血と消毒を行った。彼女を制止する気力もなく、ただ彼女にされるがままだった。 「…ごめんね、怜。苦しめて。 別れよう。」 彼女はテーブルに合鍵を置いて去っていった。 綿貫はただ、虚空を見つめていた。
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