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身を切るように過去の話をする綿貫を見て、穂積は思わず机の上にあった手を握った。 綿貫は驚いた顔をしたが、払いのけたり引っ込めたりする様子がないのでそのまま手を握っていた。 「…面白くもない話でしょう?」 沈黙に耐えかねたのか、綿貫が笑顔を作る。 「怜。」 穂積は手を離すことのないまま立ちあがって綿貫の背後にまわり、椅子ごと優しく抱きしめた。抱きしめている穂積の手にそっと頬を寄せた綿貫の肩が微かに震えていた。 本当の綿貫は笑顔の仮面の下で孤独に震え、見えない涙を流していたのかもしれない。 「…涼さん。」 そっと手を離し、椅子から立ち上がって穂積と向き合った綿貫は、いつも通りの笑顔だった。 「だから僕は、もう恋はできません。」
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