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痛みを覚えるほど強く抱きしめる手から何かを感じた綿貫は、穂積の背をそっと撫でた。
「涼さん。大丈夫です…」
穂積が伝えたいことは分からなかったが、綿貫を離したくないという気持ちだけは伝わってきた。
恋はできなくても、穂積のそばにいることはできる。こんな自分にも真摯に向き合ってくれた穂積には、幸せになってほしい。
そんな願いを込めて、優しく穂積の背を撫でつづけた。願いは、言葉にできなかった。
自分と恋をしたいと言っている穂積には、酷な願いだと分かっていたから。
しばらく抱きしめられていたが、ふっと穂積の手の力が緩んだ。
「…ごめんね、痛かったでしょ。」
苦笑いのような笑顔で、穂積が笑う。
そんな顔をさせたいわけじゃなかった。
ただ、穂積に幸せになってほしい。
それだけだった。
「大丈夫です。」
今、自分はうまく笑えているだろうか?
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