6

1/2
前へ
/28ページ
次へ

6

なんとなく飲み会はお開きとなり、片付けを手伝うと申し出てくれた穂積の言葉も辞退した綿貫は1人手を動かしながら考えていた。 「恋って、なんなんだろうな…」 思わず口に出ていた。答えなんて出ないと分かっていたが、それでも綿貫は考えてしまう。 恋というものがなければ、自らの人生も狂わなかったのではないかと。 世の中の恋物語は言う。 恋は何もかもを変えると。 その変化がいいものだけなら構わない。 恋によって何もかもが悪くなるかもしれないのに、それでも恋は存在する。 人は言う。 恋は『おちる』ものだと。 落ちる、堕ちる…どちらにせよ、抗いようのないものなのかもしれない。 だとしたら、綿貫の穂積に対するこの気持ちはなんなのか。 答えが出ないまま、夜は更けてゆく。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加