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穂積は目の前に座る綿貫を見て、今は亡き姉を思い出した。 病床に臥しながらもなお弟である穂積の行く末を心配していた姉。数年前、その姉が亡くなる前に言っていた言葉がある。 「涼…あなたが本当に好きな人と、生きなさい。」 男性しか愛せないことは話していなかったが、姉は何となく感づいていたのだろう。 その言葉を遺し、姉は静かに息を引き取った。 「…姉さん、ありがとう。」 穂積は性的指向を自認したときに幸せになることを諦めていた。しかし、姉の言葉を受けて、自身の幸せを考えてみようと思ったのだった。 綿貫は黙っている穂積に何か言うでもなく、1人黙々と酒を飲んでいた。考え事をしているときに話しかけられるのが嫌いな綿貫は、考え込んでいる人には話しかけないと決めている。 「怜くん。」 ふっと声をかけられて顔を穂積の方に向けると、どこか真剣な眼差しで見つめられた。 「…僕と、付き合ってほしい。恋愛的な意味で。」
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