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元々好意的であったがゆえ、綿貫が穂積に心を許すまでそう時間はかからなかった。 会うたびに穂積の優しさや強さを知り、綿貫は自然と穂積を友として尊敬するようになっていた。 「怜!」 「涼さん!待たせてごめんなさい…」 あの街角での出会いから、穂積とこんな風に仲良くなるとは思っていなかった。別れがけに渡されたメールアドレスもあくまで社交辞令だろうと思い、自分のプライベートの携帯からメールをしてそのままにしていた。 しかし、穂積はきちんとメールに返信をくれ、何度か食事に行った。 今日は綿貫の家でゆっくり飲もうということで待ち合わせをしていた。綿貫が遅れたのは、仕事が予定より長引いてしまったためだった。 同じく社会人として働く穂積はその点を責める気は全くなく、走ってきたであろう綿貫に水をそっと手渡した。 「気にしなくていいよ、とりあえず水飲みな。」 「ありがとうございます…」 綿貫が水を飲み、落ち着いたところでスーパーに向かった。基本的に2人で食事をするときは割り勘で、若干穂積の方が多く出す程度にしている。穂積としては毎回奢りでも構わなかったが、綿貫が自分もこの時間を楽しんでいるから割り勘にしたいと言ってくれたためだ。 「涼さん、これ美味しそう…」 「買っとくか。美味そうだな。」 そんな会話をしながら買い物を終え、穂積は初めて綿貫の家に行った。
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