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「ひーまー!」
亞輝斗はゴロゴロと、シーツがしわくちゃになることも構わず、ベッドの上を転げ回った。
しかしながら、ベッドの主は、机に向かったまま、カリカリとペンを動かす。
「……無視かよ」
「卒業論文追い込み中の人間に、お前は一体、何を期待している」
疲労がたまり、寝不足なのか……振り返った親友、雷月の目の下には、くっきりとクマができており、ジトッと騒々しい亞輝斗を睨んだ。
友人の怒りの形相に、思わず「おう……」と、亞輝斗は静かになる。
しかしながら、そんな時に限って、タイミング悪く響く小さな音に、思わず雷月は自分の腹を見下ろした。
顔を上げると、亞輝斗の赤い目が細まり、口元が、ニヤニヤと歪んでいる。
……少し、休憩するか……と、雷月は立ち上がった。友人の気配を察したか、亞輝斗は飛び起き、そそくさと台所へついてゆく。
電気をつけると、昼食の時の食器が置きっぱなしになっているはずのテーブルの上が綺麗に片付けられており、次の食事の準備が、あらかたセッティングされていた。
「……お前か」
「いやー……マジでホント、暇だったんで」
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