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ストーブを付けながら、亞輝斗が答える。
彼は立ち上がると、今度は手際よく、冷蔵庫の中からラップのかかったオムライスを鼻歌交じりにレンジに押し込んで、鍋に火をつけた。
流し台には既に使用済みの食器が置かれていることから、妹は既に、食べ終わったのだろう。
「葉月なら、もう寝てるぞ。何時だと思ってるんだ」
時計を見て、雷月は納得した。確かに、腹も減るはずだ。既に小学生が起きているとなると、説教をしなければいけない時間だろう。
「お前は?」
「んー、明日は夜勤だから大丈夫」
ホカホカのオムライスに、亞輝斗は鍋のデミグラスソースをかけて、椅子に座った雷月の前に置いた。家事に無頓着な雷月に比べ、亞輝斗はなんというか……慣れている。
子どもの頃に、親を亡くした境遇は、一緒なのに……と、思わず苦笑した。
「どうした?」
「……別に、なんでもない」
ふんわりと焼いた卵とチキンライスを雷月は口にかきこんだ。「もうちょっと、味わって欲しいなー」と亞輝斗がため息を吐いたが、雷月には、時間がない。
「卒論の締切は、まだもう少し余裕あるんだろう?」
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