内平外成、地平天成

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 長徳元年。  西暦に換算すれば995年。  時は、一条天皇の御代。思い当たる同時代の有名人といえば、清少納言に藤原道長、紫式部……たちが、そろって生れてはいるものの、まだ若く……表舞台に現れ、活躍し始める、ほんの数年から十数年前。  ……とにかく、そんな時代の事。  源頼光が供の四天王と藤原保正とともに酒呑童子を退治した際、大江山にて巻き添えを喰らい、死んでしまった「オニ」が一匹。  消滅するはずのオニの魂は、どういうわけか約千年の時を経て、ヒトの子へと生まれ変わった。  亞輝斗……彼が見聞きした出来事は、紛れもない事実なのであろう。  が、今、雷月が書いているのは、「物語」ではなく、「論文」だ。  出典を問われても、『その時代を生きた鬼の証言』とは、とても書けない。  雷月のため息を、「不要」と受け取った亞輝斗は、ムッと口を尖らせて、叫ぶ。 「内平外成、地平天成」 「は?」  突然、彼の口から紡がれた言葉に、雷月は何のことか解らず、言葉を詰まらせる。 「平成の元ネタだよ」  再度、亞輝斗は壁のカレンダーを顎で示した。
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